ところてん

 

ところてんをはじめて食べたのは、中学生のとき、友人の家で出されたものだった。

ガラスの器に入れられた半透明のなにかが、うす茶色い液体に浸っている。

「なんやこれ?」

「ところてんやないか!」

名前は知っていたが見たのは初めてだった。

 

当時の私は、みつまめのカンテンが嫌いだった。

酢の物も嫌いだった。

ネギも嫌いだった。

しかも、頭の中には『カンテンは甘い』という先入観があったので、口に入れたときの衝撃はすごかった。

 

次に出会ったときのことは覚えていない。

ただひとつ驚いたのは、味付けが酢じょうゆではなく、黒蜜だったことだ。

中学時代に、私の脳には『ところてんとは酸っぱいもの』と刷り込まれた。

なのに今度は黒蜜?

私は黒砂糖が嫌いだった。

 

私に対してあらゆる嫌がらせを仕掛けてくるところてん。

だが、世間はところてんのことをおおむね好意的に見ている。

ところてんの話題になると、酢じょうゆ派か黒蜜派かで盛り上がる。

無所属の私は、いつも疑問に思っている。

味付けが、酢じょうゆと黒蜜の二種類に限定されてるってどういうことだ。

 

たとえばラーメンなら塩、ミソ、しょうゆ、とんこつ、カレーといろいろあってもとりあえず『辛い』で方向はいっしょだ。

餅はあんこでもポン酢でも食べるが、バリエーションがものすごく広い。

ところてんはなぜたった二つの味付けを選んだのだ?

なぜこんなに極端に離れた、しかもマイナーな味をチョイスしたのだ?

着るものは「カミシモor雨合羽」か!

履物は「スキー靴or竹馬」か!

そんな選択があるか。

 

中間の『甘酸っぱい』や『甘辛い』はなぜないのだ。

酢じょうゆがあるなら、マヨネーズやピリ辛味噌があってもいいじゃないか。

黒蜜がOKなら、練乳がけやホイップクリームも試してみろ。

だいたい、おかずなのかおやつなのか。

弁当に入れてもいいのか、いかんのか。

ひょっとして、他の地域には違う食べ方があるのか。

 

さて、こんなところてんにも、ひとつだけ興味を引かれることがある。

あの「にょろ」っと突き出すやつだ。

あれはなんだかやってみたい。

だからといって、食べもしないものの専門道具を買うのもバカらしい。

体験させてくれる施設というのも知らない。

さては、この「楽しいけどやらせてあげないよ」というのも、ところてんのいやがらせなのか!

 

 

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