「ごめんよ」
「いらっしゃい」
「寒が戻ったみたいだね〜」
「花冷えってヤツですかね。アタシらは火を扱ってるから平気ですがね」
「うらやましいね。酒と蒲焼の上をもらおうか」
「へい」
「景気はどうだい」
「へへっ、ごらんの通りの閑古鳥でさぁ」
「確かに、お客がいないねえ」
「アタシが商売下手なんだろうけど、何がいけないのかねえ」
「・・・大将、気を悪くしないでもらいたいんだけどね」
「へぇ、なんでしょ」
「店の名前が悪いんじゃないかね」
「そうッスか? うなぎやらしくていいと思うんですけどねえ」
「でも『うなぬる』はないだろう」
「ダメッスか?」
「なんだかね、生臭そうな気がするんだよ」
「へいっ、うなぬる焼き、お待ちっ」
「せめて蒲焼は蒲焼にしときなよ・・・」
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