「おじさん、どうしても行っちゃうの?」
「仕方がないさ」
「この町に住めばいいのに」
「奇術師はね、ひとつの町では暮らしていけないのさ」
「じゃあ・・・やっぱりサヨナラなんだね」
「ああ」
「おじさん、ひとつだけ教えて」」
「なんだい?」
「おじさんの手を縛っていたロープをどうやって消したの?」
「んん? ふふっ」
「教えてよ」
「それを聞いてどうするんだい。友達に自慢するのかな」
「違うよ! ボク、大きくなったらおじさんみたいな奇術師になりたいんだ」
「ほう」
「絶対に誰にも言わないから、ねっ」
「ふむ・・」
「お願い」
「ふふ、君は幼いころの私によく似ているな」
「え?」
「いいだろう、教えてあげよう」
「ホント!」
「そのかわり誰にも言っちゃいけないよ」
「約束するよ!」
「おじさんの両手を固く縛っていたあのロープは・・・」
「あのロープは?」
「じつはあれ、かんぴょうだったんだよ」
「ええー! じゃあ、食べちゃったの?」
「誰にも言うんじゃないぞ」
「うん、ありがとう、おじさん」
「じゃあな」
「さようなら」
「♪さ〜すらいの〜 き〜じゅつしは〜 お〜しゃべりさ〜 る〜るらら〜」
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