「ちょっと、兄ちゃん。そこのトサカ頭の兄ちゃん」 「え、おばあちゃん、オレのこと?」 「そうそう、兄ちゃんじゃ」 「なに?」 「すまんけど、この横断歩道、おんぶして渡ってくれんかのう」 「はぁ?」 「この道、車がびゅうびゅう通るじゃろ。年寄りには怖くて怖くて」 「ええ〜、恥ずかしいじゃん」 「なに、タダとは言わん。ええもんをやるぞ」 「ええもん? なんだい?」 「イノシシの肉じゃ」 「イノシシ? イノシシってあのイノシシ?」 「3百kgの大物じゃった」 「大物って・・・まるで自分が捕まえたみたいに〜」 「ワシが自分で捕ったんじゃ」 「捕った? だってイノシシって凶暴なんじゃないの?」 「おうよ、じゃがワシとてマタギのはしくれ、イノシシなんざあちょちょいのちょいよ」 「ええ〜ばあちゃん、マタギなの?」 「突進してきたところをすんででかわして、耳の後ろに槍をぶち込むのよ、カッカッカ」 「ばあちゃん・・・車なんか怖くないでしょ」
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