「ちょっと、兄ちゃん。そこの耳に数珠つけた兄ちゃん」
「え、おばあちゃん、オレのこと?」
「そうそう、兄ちゃんじゃ」
「なに?」
「すまんけど、この横断歩道、お姫さま抱っこで渡ってくれんかのう」
「はぁ?」
「歩道橋を渡ればいいのじゃろうけど、高いところに登ると足がすくんでのう」
「ええ〜、恥ずかしいじゃん」
「なに、タダとは言わん。ええもんをやるぞ」
「ええもん? なんだい?」
「イワタケじゃ」
「イワタケ? イワタケってキノコ?」
「山奥の崖っぷちにしか生えん、超貴重品じゃ」
「そんなものどうやって手に入れたの」
「ワシが自分で採ったんじゃ」
「採った? だって崖っぷちにしか生えないんでしょ」
「これでも伊賀くの一の末裔、オーバーハングでもドンと来いじゃ」
「ええ〜 ロープか何かでぶら下がるの?」
「なんのなんの、岩肌のツルを伝ってちょちょいのちょいじゃい、カッカッカ」
「ばあちゃん・・・人生で足がすくんだこと、ないでしょ」
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